南ゆうこ yuko minami

壁があれば

考え過ぎて
動けなくなるくらいなら
それが嫌なら
登ってみなさい

と、言ったわけではなく

海辺であそぶ

近頃
寝付きが悪い
眠れない

そんな言葉が聞こえてきて

そうか…
ふーん、なんでかなぁ

と聞きながら

海の近くまで
行ったので
寄り道をする

すこーーーーんと
晴れわたる空と海

思わず

すごいー
ひろいー
わーーー

と それしかでない

あなたが小さい頃
わたしがいちばん大事に思って
いたのは

これでしょう

と思う

一瞬にして
頭を空っぽにしてくれる

そういうものとの出会いが
生きるときに
ものすごく
力を与えてくれる

そこに戻れば
大丈夫なんだと
信じられる感覚

そういうことを
貯めていってほしい

砂だらけになって

娘におみやげに貝を拾って
帰りました。

よく眠れるといいね

土にころんで

ころんだ子の土を払った

受けとめてくれたのは 土

たくさんころんで おぼえなさいね

土の匂い

冬の雨

昨日の一歩は軽かったのに

こんなに一歩が重いなんて

歩き続けたら 

晴れの日には見られない景色に出会えるんだろうか

冬の朝
猫がもどす 
背中の向こうに白い湯気

生きてる

ふたつのせなか
机に向かう

交わらない平行線

気配のあたたかさ

花が咲いた

冬に聴く 

子守歌のような花が咲いた


遠い昔に聴いた うた

朗読

ぶつぶつ 

もぐもぐ もぐもぐ

言葉を食べる

ぬるっとした感情をいったん置いて

そのうちやってくる  

かもしれない

あ    

おいし

という瞬間のために

冷たい床に寝ていた猫が

ソファーにまるまった日

秋が 一歩すすんだ