南ゆうこ yuko minami


言葉にすることでわかりあえることがあります。
声を使うことでしか伝わらないことがあります。
けれども言葉や声の背後から感じられる、人がそこにいるだけで一緒に振動するもの。
どんな気持ちで生きてきたのか。言葉ではなく実際に会うと無意識に感じ取ることができるもの、そういったものに安心や温もりを覚えることはないでしょうか。わたしたちは、無数の人たちに直接的に間接的に支えられ、その見えないつながりの糸に疲弊しながら渇望もし、人は人のなかで影響しあって生きています。
「人が言葉に表しえないものに耳を傾けようとする」
ひとつひとつの公演を通して人と関わるなかで、また作品を通して、他者にも自分のなかにも耳を澄まそうとした10年間でした。コロナ渦でつながりを断たれた期間を経て、AIの時代になっても人間にしかできないことはこういうことではないでしょうか。

みなさまの心が休まるような時間になればと願っています。

「ちいさきもの、その祈り」に関わってくださった方々にお礼申し上げます。
足をお運びくださった皆さま、ありがとうございました。

ちいさきもの、その祈りvol.2
―詩と物語でつなぐ はるかな湖- 公演に寄せて