
トランクの物語を読みながら思い出したこと。
はじめて、旅行に行ったとき
トランクを持って海の向こうに行くことに憧れて
父の茶色い皮のトランクを持って行った。
ところがトランクは重かった。
鞄だけでも重いうえに、荷物を入れるとさらに重い。
トランクと一緒に飛行機に乗ったのは一度きり、
中学3年生の夏、ブルガリアへの演奏旅行。
ただ、当時入っていた合唱団からの演奏旅行に参加する機会を持てたという
両親に感謝するばかり。
中学生だった自分が覚えていることと言えば、
「ソフィア」という町の名前がきれいで、リラ修道院の模様は、まるでシマウマ。
今まで「ヨーグルト」と呼んでいた食べ物は、はたして同じ名前で呼んでいい食べ物なのか、口をつけるのがむつかしかったブルガリアのヨーグルト。
歌った歌は覚えていても、歌った記憶はどこを探しても見つからない。
でも、匂いも聞こえる音も、目に入るものすべて、自分の知っている日常とまるでちがう世界が、この世界の同じ時間の中にあることを教科書の外ではじめて知ったのは、このときでした。




