
うぶごえ
人としてうまれたわたしたちの
はじめの声がそこにあった
まだ 個は内包されたまま
どこで生まれても、どんな性に生まれても
生きることのなかった声を聴き
いのちのはじまる声を聴く
ひかりのなかに
うぶごえ
人としてうまれたわたしたちの
はじめの声がそこにあった
まだ 個は内包されたまま
どこで生まれても、どんな性に生まれても
生きることのなかった声を聴き
いのちのはじまる声を聴く
ひかりのなかに
雨の日には
傘の下
雨宿り
先日、軽トラに乗りながらこの感覚に覚えがあるのに思い出せず、しばらくして思い出した。これは旅のあいだの感覚に近い。
オートマではあるけれど、快適な空間、便利さ、手厚く守るものがなにもない。
鍵を挿して回さないとエンジンがかからない。
鍵を見失うことがない。
音楽を聞く環境もなし。
今日は何を聞こうかなんて考えない。
窓は手動。
こどもの手を挟む心配もない。
運転席の座席を上げるとエンジンが丸見え。ドアも薄い。ハンドルなんて抜けそうに細い。
でも、汚れても傷がついても、靴が土だらけでも、軽トラだからかまわない。
軽トラはそれ以上にはなりえない。どこから見ても白い軽トラはほかのものになる隙間が1ミリもない。
そこがいい。
大きな窓はよく見渡せるけれど、ぶつかったときにはボンネットのないフロントガラスは目の前にある。
それは車に乗ることが、危険が伴うことを忘れずにいられる。
旅のあいだ、荷物は最小限。
捕られて困るものはパスポートくらい。服も2.3枚で洗えばいいし、最後は手放して帰るくらいのくたびれた服でいい。必要な時はその場で買えばいい。
とにかく、なくなって困るものといえば生きていることくらい。
そのうち、性別も年齢も忘れるほどの軽やかさで、人や世界に出会うような気持ちになる。
こどもを生んで旅からすこし離れ、なくなって困るものは自分のいのちだけではなくなった。それはそんなふうに思ってもらっていたことを知ることでもあった。
軽トラに乗ったら思い出した。
この感じ
pianissimo
冬の静けさ
頬杖ついて 春風を待つ日々のはじまり
外は寒く 心あたたか
ボリビアのバスの中で 隣に座った人が言う
娘を理解できないの
チベットの乾いた家の前
洗濯する母親のそばから離れないこども
人の営みは 変わらず
‐
‐
この世で、人はほんの短い時間を、
土の上で過ごすだけにすぎない。
仕事をして、愛して、眠って、
ひょいと、ある日、姿を消すのだ。
人は、おおきな樹のなかに。
アメージングツリー 長田弘 より
降る
ひとつの息から
うまれる波紋
眠りなさい
空の白むまで
月は
やさしく
頬を撫でる
朝顔の咲く日を
待つ
蕾見えず
足元の風
涼しく
水 鏡のように
「がんばることばっかりでいやだ」
と言って眠れない子
「あしたは 帰ったら抱っこでいようか」
と言ったら
「えへへ ねまーす」
笑顔になった。
おやすみ
こどもが言う
ここにはぜんぶあるよ
わらい声と いのちの巡り
静かに 願う
きれいね
小さなよろこび
壁があれば
考え過ぎて
動けなくなるくらいなら
それが嫌なら
登ってみなさい
と、言ったわけではなく
海辺であそぶ
近頃
寝付きが悪い
眠れない
そんな言葉が聞こえてきて
そうか…
ふーん、なんでかなぁ
と聞きながら
海の近くまで
行ったので
寄り道をする
すこーーーーんと
晴れわたる空と海
思わず
すごいー
ひろいー
わーーー
と それしかでない
あなたが小さい頃
わたしがいちばん大事に思って
いたのは
これでしょう
と思う
一瞬にして
頭を空っぽにしてくれる
そういうものとの出会いが
生きるときに
ものすごく
力を与えてくれる
そこに戻れば
大丈夫なんだと
信じられる感覚
そういうことを
貯めていってほしい
砂だらけになって
娘におみやげに貝を拾って
帰りました。
よく眠れるといいね
銀の花 咲く
土にころんで
ころんだ子の土を払った
受けとめてくれたのは 土
たくさんころんで おぼえなさいね
土の匂い
春
春
春
こーい