南ゆうこ yuko minami

やすらかさとは 懐かしさである
そのなかでひとは 何かを手放せる

ほんとうは 手放したくて
出会っていた

手放すために
狂おしく 愛していた


なつかしさ「ひかりのなかのこども」より/稲尾教彦

今年、詩人で語り研究家稲尾教彦さんの10年ぶり2作目の詩集「ひかりのなかのこども」が
うまれました。
6月に行われたのりへいさん(稲尾さん)とのふたつの朗読会では、この新しい詩集の中からひとつ読ませていただきました。

忘れてはいけません
近所の洋品店で買った素敵な青い体操服

忘れてはいけません
だれにもおすすめしなくても
思わず膝を抱えて胡坐を組みながら聴きたくなる
ガ と グ しか思いつかず
それっぽい言葉をすっ飛ばして
だいっすき また来ますって言ってしまう 
骨まで震える小さなライブ

忘れてはいけません
先生にバツをつけられるねんな
でもそれが楽しいと思うんでしょ 字のあそび

だれかの素敵は
じぶんの素敵とちがうこと

そこに眠る
ちいさな宝石