南ゆうこ yuko minami

朗読

ぶつぶつ 

もぐもぐ もぐもぐ

言葉を食べる

ぬるっとした感情をいったん置いて

そのうちやってくる  

かもしれない

あ    

おいし

という瞬間のために

冷たい床に寝ていた猫が

ソファーにまるまった日

秋が 一歩すすんだ

おはよう 朝

近くで鳥が鳴いてる

猫が それを目で追う

細いひげ 光ってる

いつもの朝

手を止めると


美しいものが そこにも ここにも 

転がってる 聴こえてくる


でも 立ち止まらないと 

ささやかすぎて拾えない

額に映り込む 朝のひかり
こどもの小さな温かい手
猫の足音
白く揺れるやかんの湯気

ちいさく 
ふるふると
心をゆらすものたち

ささやかなものが 日々を支える