
冬の雨
昨日の一歩は軽かったのに
こんなに一歩が重いなんて
歩き続けたら
晴れの日には見られない景色に出会えるんだろうか
冬の雨
昨日の一歩は軽かったのに
こんなに一歩が重いなんて
歩き続けたら
晴れの日には見られない景色に出会えるんだろうか
冬の朝
猫がもどす
背中の向こうに白い湯気
生きてる
ふたつのせなか
机に向かう
交わらない平行線
気配のあたたかさ
ここにも星屑
ちがう星の集まり
満天の夜空をつくる
空気が締まってくると
なにかが澄んでいくような気がする
冬の朝にだけ さしこむ光
人が亡くなることは
図書館をひとつ
失うことだと
優しい雨の夜
小説は昨日の続き
花が咲いた
冬に聴く
子守歌のような花が咲いた
遠い昔に聴いた うた
朗読
ぶつぶつ
もぐもぐ もぐもぐ
言葉を食べる
ぬるっとした感情をいったん置いて
そのうちやってくる
かもしれない
あ
おいし
という瞬間のために
世界が静けさをとりもどしてゆく
白い雨
糸のように
色褪せたカーテンと秋の光は
きっとなかよし
水面の青
空の青よりも深く
静寂に沈む 小さな祈り
冷たい床に寝ていた猫が
ソファーにまるまった日
秋が 一歩すすんだ
おはよう 朝
近くで鳥が鳴いてる
猫が それを目で追う
細いひげ 光ってる
いつもの朝
手を止めると
美しいものが そこにも ここにも
転がってる 聴こえてくる
でも 立ち止まらないと
ささやかすぎて拾えない
額に映り込む 朝のひかり
こどもの小さな温かい手
猫の足音
白く揺れるやかんの湯気
ちいさく
ふるふると
心をゆらすものたち
ささやかなものが 日々を支える
歩いてきた道
足へのいたわり
眠れない夜を越えて
星の美しさを知る
もう 靴下を履かないと